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大戦略誕生秘話「超シミュレーションゲーム誕生」

 大戦略誕生秘話「超シミュレーションゲーム誕生」 著作:宮迫靖(みやさこ おさむ) ●はじめに  ちょっと話はそれるが、私が大学生の頃、夢中になって読んだ本に「超マシン誕生」という、当時のデジタルイクイップメント社(最近、コンパック社に買収された)と対抗するデータゼネラル社のエンジニアが、ミニコンの新製品を開発するというノンフィクションがあった。  当時は、私もプログラマの端くれであったため、新製品の開発に、果敢に挑戦する若きエンジニア達のドキュメンタリに思わずのめり込んだわけであるが、今回、この連載のタイトルを考えていた際に、ふと自然に思い浮かんだのがこの本のタイトルである。そのまんまなので引け目を感じないでもないが、これから書こうとしている内容に、とりあえず今思いつく範囲では、いちばんピッタリという気がしている。  前置きはこれくらいにして、さっそく本編に入ろう。 ●第1話「運命の出会い」  1985年(昭和60年)7月9日。  その日は朝から梅雨の合間の太陽がふりそそぎ、会社にこもって仕事をするには、きわめて精神衛生上よろしくない日であった。昼過ぎに受付から電話があって、アポイントなしにゲームソフトを持ち込んだ人が来ているとのこと。たまたま私しか対応できる者がいなかったので、内心やれやれと思いつつ、重い腰を上げた。  行ってみると、スラリとしたかなり長身の男が立っていた。ジーパンにTシャツというラフな格好には別に驚きもしなかったが、後ろには赤ん坊を抱いた奥さんとおぼしき人もいっしょだったのには、面食らってしまった。とつぜんここで浪花節が始まったらどうしようか、という不安が心をよぎったのである。  妙な緊張感が走る中、挨拶もそこそこに、さっそく見せてもらうことにしたが、おもむろに取り出したフロッピーディスクを見ると、なんと PC-98 用ではないか! 当時、ゲームといえば PC-88 に代表される 8 ビット機が主流であり、 PC-98 などの 16 ビット機は、仕事用と相場は決まっていた。ますますもって、気が重くなっていくのが感じられた。   PC-9801F2 の、 5 インチ 2DD ディスクドライブが独特の音色でアクセスを開始し、長めのアクセスのあと、突如としてテキストグラフィックで描かれたタイトル画面が表示された。「 A